周波数成分分析計器の基礎知識:スペクトラムアナライザとFFTアナライザの違いと活用方法

現代の電子機器開発や通信分野では、信号中の周波数成分を解析する計測器が不可欠です。特に「スペクトラムアナライザ」と「FFTアナライザ」は、周波数成分を正確に測定するための代表的な機器です。本記事では、これらの計測器の基本原理や特徴、そして利用例について詳しく解説します。

周波数成分分析とは?

周波数成分分析では、信号中に含まれる各周波数成分とその信号レベル(振幅)を測定します。この解析結果は、横軸が周波数、縦軸が信号レベルとして可視化され、周波数成分の特性を一目で把握できます。このような表示形式は「周波数ドメイン表示」と呼ばれます。一方、オシロスコープなどは「時間ドメイン表示」として波形の時間的変化を捉えます。

周波数成分を測定する2つの方法

周波数成分を測定する方法には、主に以下の2つがあります。

1. フィルタを用いる方法

特定の周波数だけを通過させる「フィルタ」を利用して測定する方法です。スペクトラムアナライザはこの方式を採用しています。多数のフィルタを使用して周波数を選択し、それぞれの信号レベルを検出します。ただし、実際には効率的な回路設計により、すべての周波数にフィルタを用意する必要はありません。

2. コンピュータ計算による方法

入力信号をデジタル化して、計算処理で周波数成分を解析する方法です。この方式を採用したFFTアナライザは、特に低周波数帯域の測定に適しています。FFT(高速フーリエ変換)を用いることで、時間ドメインのデータを周波数ドメインに変換します。

スペクトラムアナライザの基本構造

スペクトラムアナライザは「スーパーヘテロダイン方式」という回路構成を採用しており、AMラジオ受信機と類似した仕組みで動作します。以下に主な構成要素を解説します。

ミキサ

ミキサは入力信号の周波数を変換する装置です。局部発振器からの信号と入力信号を混合し、新しい周波数成分を生成します。この過程により、目的の周波数成分を選択可能にします。

IFフィルタ(中間周波フィルタ)

特定の周波数成分だけを通過させるフィルタで、周波数分解能を決定します。測定目的に応じて通過帯域を調整可能です。

局部発振器

測定対象の周波数に応じて発振周波数を設定し、ミキサで目的の周波数成分を抽出する役割を担います。

RF入力アッテネータ

入力信号のレベルを調整し、測定器内部の信号処理回路を最適化します。適切なレベル設定により、信号の歪みやノイズを抑制します。

検波器

信号レベルを測定する部分で、包絡線検波によって交流信号の振幅を抽出します。

ビデオフィルタ

検波器出力の信号を平滑化し、不要な高周波成分を除去します。これにより、測定結果のノイズが低減されます。

FFTアナライザの基本構造

FFTアナライザは、デジタル信号処理を利用して周波数成分を解析します。以下に主要な構成要素を解説します。

入力アンプ

入力信号のレベルを適切な範囲に調整します。信号レベルが大きすぎる場合は減衰、小さすぎる場合は増幅を行います。

アンチエイリアシングフィルタ

サンプリング周波数の1/2を超える周波数成分を除去するフィルタで、エイリアシング(折り返しノイズ)の発生を防ぎます。

A/Dコンバータ

アナログ信号をデジタル信号に変換する装置で、高精度なデータ解析を可能にします。

データ処理部

FFT演算を行い、入力信号の周波数成分を算出します。演算結果はディスプレイに表示されます。

スペクトラムアナライザとFFTアナライザの比較

スペクトラムアナライザとFFTアナライザは、それぞれ異なる特徴を持つ計測器です。使用する目的や測定対象に応じて、適切な計測器を選択する必要があります。

測定対象

スペクトラムアナライザは、高周波信号の測定に適しており、通信機器や無線周波数帯域の測定で活躍します。一方、FFTアナライザは低周波信号を対象とし、振動解析や音響解析などの分野で利用されることが多いです。

動作原理

スペクトラムアナライザはフィルタとスーパーヘテロダイン方式を用いて周波数成分を解析します。一方、FFTアナライザは高速フーリエ変換(FFT)を利用して、時間ドメインのデータを周波数ドメインに変換します。

使用例

スペクトラムアナライザは、広い周波数範囲を測定する必要がある通信機器の特性評価や、無線周波数帯域の調査に向いています。一方、FFTアナライザは振動や音響など、低周波の詳細な解析を得意としています。

長所と短所

スペクトラムアナライザは広帯域測定が可能で、高周波測定の精度が高いというメリットがありますが、回路構成が複雑でコストが高いというデメリットもあります。一方、FFTアナライザは高速かつ精密な測定が可能であり、低周波帯域では優れた性能を発揮しますが、高周波帯域での測定には限界がある場合があります。

計測器選びのポイント

スペクトラムアナライザとFFTアナライザは、それぞれ特性が異なるため、用途に応じて選択することが重要です。以下の基準を参考にしてください。

測定する周波数帯域

高周波の場合はスペクトラムアナライザ、低周波の場合はFFTアナライザが適しています。

測定速度

高速な測定が必要な場合はFFTアナライザが有利です。

コストと精度

測定精度を重視する場合はスペクトラムアナライザが適していますが、予算内で選択することも大切です。

まとめ

スペクトラムアナライザとFFTアナライザは、信号の周波数成分を測定するための重要な計測器です。それぞれの特徴を理解し 、用途に応じた選択と活用を行うことで、効率的な開発と解析が可能になります。計測器選びは、測定の成功を左右する重要なステップです。正確な情報と知識をもとに最適な計測器を導入しましょう。

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