アナログ電圧計の基礎知識:種類・構造・使い方まとめ
電圧計は、電気回路の電圧を測定するための基本的な計器です。アナログ指示計器として広く利用されており、回路の設計や保守に欠かせない存在です。本記事では、電圧計の測定原理、種類、構造、正しい使い方について詳しく解説します。
電圧計の測定方法
電圧を測定するには、以下のような方法が採用されています。
電位差計を用いる方法
測定対象回路から電流を取りません。 高精度な測定が可能ですが、実務用途には向きません。
電流計を用いる方法
感度の高い電流計を用いて、微小電流を測定し、オームの法則(V=IR)に基づいて電圧を算出します。 実用的かつ広く使用される方法ですが、測定対象の回路から電流をとるため回路に影響を与える可能性があります。
A/D変換器を用いる方法
デジタル計器に採用され、わずかな電流で高精度な測定が可能です。
アナログ指示計器の電圧計では、一般的に「電流計を用いる方法」が採用されています。
電圧計の種類
電圧計は動作原理によって分類され、用途に応じた選択が求められます。
1. 直流電圧計
感度の高い可動コイル形電流計と高抵抗(倍率器)を直列接続することで、直流電圧を測定します。目盛は等間隔で、測定範囲を広げるための倍率器が組み込まれています。
2. 交流電圧計
交流をそのまま測定する方式と、交流を直流に変換して測定する方式があります。
整流形交流電圧計
ダイオードと可動コイル形電流計を組み合わせた構造です。低電圧での精度に課題がありますが、広範囲で使用されています。
可動鉄片形電圧計
商用電源周波数(45~65Hz)の交流電圧測定に適し、堅牢で安価です。
電流力計形電圧計
固定コイルと可動コイルを直列接続し、流れる電流の2乗に比例するトルクを利用します。直流から商用周波数程度まで対応します。
静電形電圧計
高電圧の測定に適しており、電圧を直接利用して駆動トルクを発生させます。
熱電形電圧計
高周波電圧を測定するために使用され、熱電対を利用して直流電圧に変換します。
電圧計の内部構造
1. 倍率器
倍率器は、高抵抗を電流計に直列接続することで測定範囲を拡大する部品です。たとえば、電流計の内部抵抗が10Ω、定格電流が1mAの場合、定格電圧は10mVとなります。この値では電圧計として使用するには不十分ですが、高抵抗の倍率器を加えることで計測可能な電圧を大幅に引き上げられます。
2. 内部抵抗
電圧計の内部抵抗は、電流計の抵抗と倍率器の抵抗の合計です。内部抵抗が高いほど、測定対象回路に影響を与えにくく、誤差の小さい測定が可能です。
電圧計の使い方
1. 回路への接続
電圧計は、測定対象回路の両端に並列に接続します。回路を切断する必要がなく、容易に測定できます。
2. 直流測定時の極性確認
直流電圧を測定する際には、電圧計の+端子と-端子を正しく接続する必要があります。極性を誤ると、指針が逆方向に振れたり、計器を破損する可能性があります。
3. 零位調整
使用前に、指針が0を指しているか確認します。ずれている場合には調整ネジを回して零位を合わせます。
4. レンジ選択
測定対象の電圧が不明な場合には、最も大きなレンジから測定を始め、適切なレンジに調整します。レンジを超える電圧が加わると計器が故障する恐れがあります。
5. 誤差への注意
電圧計は測定対象回路から微小な電流を取り込むため、内部抵抗の低い計器では測定誤差が大きくなります。高抵抗の電圧計を選択することで、この誤差を最小限に抑えることができます。
電圧計の測定誤差と対策
電圧計の測定誤差は、主に以下の要因によって生じます。
内部抵抗の影響
測定対象の抵抗値に対して電圧計の内部抵抗が小さいと、測定値に影響を与える可能性があります。
レンジの選択ミス
適切なレンジを選択しない場合、正確な測定ができなくなります。
指針の読み取りミス
倍率器を用いた計器では、目盛が複数段階になっているため、正しい目盛を確認する必要があります。
まとめ
電圧計は、電気回路の診断や設計、保守において欠かせない計測器です。用途や測定条件に応じて適切な種類を選び、正確に使用することで、電気回路の状態を把握しやすくなります。特に、内部抵抗の高い計器を選択することで、測定誤差を抑えつつ、正確なデータを取得できます。
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