スペクトラムアナライザの操作方法:正確な測定を行うためのステップ
スペクトラムアナライザは、電子機器や高周波回路の評価に欠かせない計測器です。特に、周波数成分や信号レベルの測定においてその性能を発揮します。本記事では、スペクトラムアナライザの操作手順を詳しく解説します。
スペクトラムアナライザの基本構成
スペクトラムアナライザの操作パネルには、次のような基本的な要素があります。
電源スイッチ
電源スイッチは、通常「0(OFF)」と「1(ON)」を示すマークで表され、デバイスの起動状態を示すランプが配置されています。
信号入力コネクタ
信号を取り込むための端子で、一般的にN型コネクタやSMAコネクタが使用されます。接続時には、適切な締め付けや最大入力レベルを確認することが重要です。
ディスプレイ
測定結果や設定値を表示する部分で、カラー液晶が主流です。
テンキーと単位キー
数値や単位を入力するためのキーです。たとえば、周波数を入力する場合、テンキーで「200」を入力し、単位キーで「MHz」を選択します。
ロータリノブ
ダイヤルを回して設定値を調整する部品です。連続した値の設定に便利で、特に分解能帯域幅(RBW)のような固定値を設定する際に活用されます。
基本的な操作手順
1. ウォーミングアップ
スペクトラムアナライザは、内部回路が温度に影響を受けやすいため、起動後に30分程度のウォーミングアップが必要です。これにより、安定した測定結果が得られます。
2. 信号入力の接続
測定対象を信号入力コネクタに接続します。この際、入力信号がスペクトラムアナライザの最大入力レベルを超えないように注意してください。過剰な入力は機器の損傷につながります。
3. 測定周波数範囲の設定
測定対象の周波数範囲を次のいずれかの方法で設定します:
・中心周波数(Center Frequency) と 周波数スパン(Frequency Span) の設定
・開始周波数(Start Frequency) と 終了周波数(Stop Frequency) の設定
たとえば、100MHzから300MHzの範囲を測定する場合、どちらの方法を選んでも設定可能です。
4. 測定単位の設定
縦軸の単位を「dBm」に設定します。これにより、信号レベルをデシベル単位で視覚化できます。
5. リファレンスレベル(Reference Level)の設定
測定画面の上限値にリファレンスレベルを設定します。通常は測定対象の最大信号レベルに合わせて設定します。たとえば、-35dBmの信号を測定する場合、リファレンスレベルを-30dBmに設定すると見やすくなります。
6. 縦軸のスケール設定
縦軸の1目盛(div)が表すレベル差を設定します。例として、10dB/divに設定すると、1目盛ごとに10dBの差が表示されます。
測定条件の細かい設定
RF入力アッテネータ
信号レベルを調整して、ミキサの歪を抑えたり、ノイズフロアに埋もれる小さな信号を測定したりする際に使用します。
・歪を抑える:減衰量を大きく設定
・小信号を測定:減衰量を小さく設定
IFフィルタの通過帯域幅(RBW)
測定分解能に影響するRBWを設定します。信号が近接している場合は、RBWを小さく設定して分解能を高めます。
ビデオフィルタ(VBW)
ノイズ成分を抑えるために、VBWをRBWより小さく設定します。これにより、ノイズフロア付近の信号が滑らかに表示されます。
実際の測定例
例:100MHz~300MHzの信号測定
以下の手順で測定を行います:
1. 周波数設定
100MHz~300MHzの範囲を設定
2. リファレンスレベル
-30dBmに設定
3. スケール設定
10dB/divで設定
4. RBW/VBWの設定
自動設定を使用
測定結果はディスプレイに表示され、信号成分を簡単に読み取ることができます。
便利な機能:マーカ機能とトレースモード
マーカ機能
マーカポイントを設定し、信号レベルや周波数を正確に読み取ることが可能です。また、複数のポイント間の差分も確認できます。
トレースモード
信号の動作を解析するためのモードです:
ノーマル
リアルタイムで測定結果を表示
マックスホールド
過去の最大値を保持
ミニマムホールド
過去の最小値を保持
アベレージ
データを平滑化しノイズを軽減
スペクトラムアナライザの活用例
通信機器の評価
アンテナや無線通信機器の信号特性を確認する際に役立ちます。
干渉信号の解析
隣接周波数からの干渉を特定し、システム設計の改善に活用します。
小信号の測定
ノイズフロアに近い信号を測定する際に、VBWやマーカ機能を駆使して精度を向上させます。
まとめ
スペクトラムアナライザは、高精度な周波数成分測定を可能にする計測器です。その基本操作を理解し、適切な条件設定を行うことで、測定の精度と効率を最大化できます。特に、リファレンスレベルやスケールの設定、RBWとVBWの調整は重要なポイントです。本記事を参考に、スペクトラムアナライザの操作スキルを磨き、より高度な測定に挑戦してみましょう。
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